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| フッ化物と有機フッ素化合物の違いとは?

フッ化物と有機フッ素化合物の違いとは?

(2023年9月15日 10:18 AM更新)


こんにちは!

歯の神経を守る、可能な限り痛くない治療を目指す、バクテリアセラピーで全身健康を目指す石神井公園駅の歯医者、スヴァラ歯科です。

 

 

みなさんは「フッ素」という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべますか?

歯科医院で行う虫歯予防のためのフッ素塗布や、歯磨き粉に含まれるフッ素などが思いつくでしょうか?

また、フライパンや自動車などに使われる「フッ素樹脂加工」や「テフロン加工」という言葉も聞いたことがあるかもしれません。これらはすべて「フッ素」を使ったものですが、実は同じ「フッ素」でも、その種類や性質は大きく異なります。

今回は、歯科医院で使用する「フッ化物」と、フライパンなどに使用する「有機フッ素化合物」という2つのグループに分けて、その違いについて解説していきます。

 

 

まず、「フッ化物」とは何でしょうか。フッ化物とは、水に溶けたときにマイナスイオンになる無機の物質のことです1。例えば、食塩を水に溶かすとマイナスの塩素イオンが現れますので、食塩を構成する塩素は塩化物です。また、水に溶けているフッ素イオンは「フッ化物イオン」と呼ぶのです2。したがって、ここでは、とくにフッ素元素のときには「フッ素」、それ以外のときは原則として「フッ化物」という用語を使用することにします。

 

 

歯科医院で使用している「フッ素」は、主にフッ化ナトリウム(NaF)やモノフルオロリン酸ナトリウム(Na2PO3F)などで、水に溶けた時にマイナスイオンになる『無機フッ素化合物』と呼ばれています3。これらの無機フッ素化合物は、歯の表面に塗布することで、虫歯菌が作り出す酸から歯を守ります。具体的には、以下のようなメカニズムで虫歯予防効果が発揮されます2

 

・歯の表面にあるエナメル質(ハイドロキシアパタイト)が酸によって溶け出すことを防ぐ ・溶け出したエナメル質を再石灰化(再結晶化)させる ・エナメル質中のカルシウムやリンよりも強固な結合を持つ「フルオロアパタイト」を形成する ・虫歯菌の代謝活動や酸産生能力を抑制する。

 

このように、無機フッ素化合物は歯科医院で行うプロフェッショナルケアや自宅で行うセルフケア(歯磨き粉やマウスウォッシュなど)で広く利用されています。また、水道水にフッ化物を添加する「水道水フッ素添加」も、虫歯予防の効果的な手段として、世界の約30カ国で実施されています2

 

 

 

一方、フライパンの焦げ付き防止や自動車のコーティングなどに使用する「フッ素」は、フッ素と炭素の結合を含む『有機フッ素化合物』と呼ばれる別のものです3。有機フッ素化合物は天然にはほとんど存在しない物質で、主に人間によって作り出される化合物です。この「有機フッ素化合物」という名称は、単独の物質を指す言葉ではなく、有機物質中にフッ素原子が含まれている広範な化合物の総称になります。種類数は定かではありませんが、理論上は膨大な数の種類を作り出すことができます。

 

そして、その中でニュースなどでも多く取り上げられるようになったのが「PFAS」と呼ばれる有機フッ素化合物の一群です。PFASは、水や油をはじき、熱に強く、薬品にも強い、そして光を吸収しないといった独特の性質を持っており、20世紀半ば以降、世界中で多くの製品に用いられてきました4。しかし、この化合物は人体や環境に対しても蓄積性があるため、暴露した場合には体内に溜め込まれることになります。そのため、若いころにPFASに暴露した人は、長期にわたってこの物質の有害性と一緒に生きていくことになるのです4

PFASの有害性は人間だけではなく、動物(食用・野生)の世界にも及びます。泡消火剤などの使用によって、土壌が汚染され、それが地下水や河川、海も連鎖的に汚染するため、貝類やカニ類、淡水魚はもちろんのこと、食用の豚や鶏、極端な例では北極に生息するホッキョクグマの体内からもPFASが検出されています4

 

 

 

以上が、「フッ化物」と「有機フッ素化合物」の違いとその特徴です。

次回は、「PFAS」の中でも特に問題視されている「PFOS」と「PFOA」という2つの物質について詳しく解説していきます。お楽しみに!

 



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